熟香烏龍茶

木花茶寮が提供する自園の烏龍茶の中では最も高価格帯になり、手間もかかるお茶です

価格帯だけで判断すると高いお茶となりますが、手間のかかる作業時間を考えると茶師渡辺としてはとてもリーズナブルな価格で販売していると自負しています

 

茶葉の発酵度は中〜重発酵、焙煎度は中焙煎と重焙煎の間、わかりやすくステーキで例えるとミディアムレアとウェルダンの間ぐらいとなります

この重い発酵度の烏龍茶というのは、特に対応する品種が少なく、中国や台湾でも数える程の品種しかありません

要は持って生まれたレベルが別格の品種、選ばれた品種でしか作ることの出来ない烏龍茶となります

 

木花茶寮立ち上げ以前より静岡やその他の地域の農家さんに協力していただき、様々な品種で試作をしてきましたが、この烏龍茶を作る「くらさわ」という品種は海外の重い発酵度にむく品種と比べても今のところ唯一肩を張れる品種です

 

摘採葉は熟した葉というより完熟した柔らかい葉を使用します、発酵度が高いので途中工程の攪拌という作業の回数や強さが他の烏龍茶と異なりますが、基本的に大きく異なる工程はありません

 

しかしながら焙煎を重く入れていく高級な烏龍茶である為、茶葉の形状を丸める作業が入ります、この烏龍茶も台湾のお茶と同様に球状に丸めています

重い焙煎をかける高級路線の烏龍茶の場合、茶葉を球状にしないと熱の入り方にバラつきが出るのと、早く火が入りすぎてしまう為形状の確保は必須となります

 

この状態の茶葉を1回の焙煎時間は長くても10時間程とし、半年以上かけて何度も繰り返して行きます

温度は最初と最後では50度程の開きが出る為、こまめに確認し、何度もテイスティングを重ねて進めていきます

 

焙煎に使う機械は電気の温風式焙煎機と電気の熱源があり遠赤効果を利用して焙煎する機械2台を使用します

一般的に遠赤の焙煎機は緑茶などを焙煎した場合、全て同じ味になってしまうという特徴があります

しかしながら烏龍茶では、発酵という葉内に品種由来の烏龍の成分を作る為、遠赤の焙煎機を使うとその品種由来の成分が変化をし、特徴的な個性のあるお茶に仕上がります

同じ効果をもつ機械でもお茶の種類が異なると真逆の結果になることは製茶をしていて面白く感じる部分でもあります

 

温風焙煎機でも遠赤焙煎と同じ効果を得られますが、遠赤焙煎より時間を要します

とはいえ一度に焙煎をかけられる量は温風焙煎機の方が圧倒的に勝る為、大筋を温風焙煎機でかけ、細かく輪郭を整えたり凹凸をはっきりさせたい部分などは遠赤といった流れで進めます

 

焙煎は毎日かける訳ではなく、一度焙煎をかけると茶葉の水分も減る為、その水分が戻り、茶葉内の水分の分布が均一になったことを確認したところで再度という流れになります

他のお茶の焙煎でも説明していますが、焙煎は基本的に気温が高く湿度の高い雨の火を狙い作業をしていきます

これは、水は熱伝導率が高い為、飽和水蒸気量の多い気温の高い日、同時に雨がふり、すでに85%や90%ぐらいまで湿度がある時であれば効率的に安定して焙煎を進めることができるためです

 

単純に焙煎をかけていると言っても、経験がない場合、焙煎をかけ終える半年後、一年後まで結果がわからない作業です

勿論私は経験と知識がある程度ある為、途中の修正や判断が大きくそれるということはありませんが、当初は日本の品種の特徴や癖を把握しきれない中で自分が経験してきた感覚だけが頼りの部分も多分にあった為、安定した焙煎をかけるまでには相当時間がかかりました

 

熟した濃厚な果実味と昔ながらの烏龍茶にある、深く重い味わいの調和した香味

日本の緑茶品種でもここまでの深い味わいを出せるということに専門店の方々も台湾の知り合いの方々も皆驚かれる烏龍茶です

 

去年のイベントでも紹介させていただきましたが、雑誌Hanako等でも国内の烏龍茶特集でページ中央に大きくされたお茶と同じ作りとなり、同じ品質のものを2022年10月の冬茶で作りました

またロット違いのものが加賀棒茶で有名な丸八製茶場様より2024年2月の季節のほうじ茶として現在販売されています

 

日本の烏龍茶の現在地を是非体感してください



【おすすめの飲み方】

淡くコスパよく楽しむ場合は4gの茶葉に200cc程の熱湯、各煎30秒ぐらいで8煎程

濃厚な香味を楽しむ場合は煎の長さを1分程にするのがおすすめです

冷茶の場合、上記と同じ要領で常温の水を入れ冷蔵庫に入れ12時間程で出来上がりますが、高級な焙煎茶は火香と茶のバランスを楽しみたい為、熱湯で出したものをガラスポットなどに移し、冷蔵庫で冷やすことをおすすめします